パリに年越しに行ったら手術をしちゃった話 2


この話は「パリに年越しに行ったら手術をしちゃった話1」の続きです。もし、まだこちらをご覧になっていなかったら、こちらからお読みください。


私は電車に乗ってフランスに来てしまった。その時の体調は、まだよくなってはなかったけれども、ちょっとずつ回復しているように思えた。私はパリでもう一日休めば友達と観光ができると思っていた。

次の日も1日休んだ。体調はよくなっていない。私は重い腰をあげて病院に行くことを決めた。運の悪いことにその日は日曜日だった。大概の病院は閉まっている。私はグーグルで、パリの病院を調べて大きいところを選んで行った。

私の前に六人ほどが並んでいて、2時間ほど待たされた。ナースに部屋に連れて行かれて、血圧を測ったり点滴を打ったりして、ドクターを待った。そして念のための血液検査のために、また1時間ほど待たされた。

血液検査の結果が出てきて、医者が部屋に戻って来た。CTスキャンをとると言われた。これもまた念のためと言われたが、私はCTスキャンを人生で一度もとったことがなかったから、ちょっとワクワクした。フランスっていろんなことを経験させてくれるんだなあ、なんだか楽しそうだなと思ってたら、すぐにナースの方が車椅子を持って来て、私をCTスキャンをとる部屋に運んでくれた。なんだか不思議な気分だった。腕から注射を打たれて、私はCT機械の中にグイーンと入って行った。新しい機械だったらしい。ウィーンと機械の中に入ったら、日本語で「息を吸ってください…息を止めてください…」と言われた。もちろん私は言われた通りにした。機械には逆らえない。でもまさか機械が日本語を喋るとは思っていなかったから、ちょっとたまげた。

3度目に機械に入って行った時だ。私は強烈に気持ち悪くなった。CTの内側のマシンがすごい勢いで回りはじめたのだ。それと同時に体が熱くなっていくのを感じられた。タイムマシンに乗っている感覚だった。だが時間は戻らない。もし戻ることができたのならば私はいつに戻りたいだろう。きっとクリスマス前だ、多分鍋の具材をちょっとだけ変えただろう。なんてことを考えているうちにCTスキャンは終わった。私はもともといた部屋に戻された。

部屋に戻って来て2分も経たないうちに医者が入って来た。”I have a bad news for you” 「え?」”You will need to take a surgery today” … 耳を疑った。医者が病人を間違えているんじゃないかとすら思った。私はただの食中毒、薬を飲んで寝たら治るのに、なんで手術をしなければいけないんだ。少し怒りすら感じていた。私の持っている保険が、旅行中のフランスで使えるかわからなかったから、スイスに戻ってから手術をしても良いかと聞いた。”No, you have to do it today” 医者に症状を聞いたが、病気の英語がさっぱりわからない。英語から日本語にgoogle で翻訳してもらった、そこには卵管炎と書いてあった。全然よくわからないが、医者が今日手術をすると言うのなら、しなくてはいけないんだろう。実際体調も全然よくなっていないし、ここは話を聞くしかないのだ。時間はもう夜8時を回っていた。「手術はいつ行われるんですか?」と私は聞いた「30分後にはできるさ。」と言われて驚いた。

後から知った話であるが、盲腸や虫垂は英語でappendix というらしい。私はappendix の付録の意味しか知らなかったから、盲腸と言う言葉を聞き逃していたのだ。だから卵管炎の手術をしたのだと思い込んでいた。実際、両方すごく近い距離にあるから、医者でも、手術前にCTスキャンを見ても、どっちが問題を起こしているのかわからないこともあるらしい。

それからは早かった。友達と親に電話で報告したりしたら、すぐに手術をする時間になった。私はベットごと手術室に運ばれた。その途中長い廊下を通るときにも、私はずっと天井を見つめていた。こんなに長い間天井を見つめるなんて初めてだった。天井にも模様があることを、その時初めて知った。そして、手術用の眩しいほど大きな明るい電気が真ん中にある部屋に運ばれた。隣の机には、何人もの医師が緑色の帽子を被って、緑色の手術用の服を着ていた。みんなマスクを被っていて、手袋をした手でメスっぽいもの(見えてないのでわからないが)を準備したりしていた。それはまさに映画やドラマでしか見たことのない景色だった。私は、最近見た医療系のドラマ、「アンナチュラル」の美澄さんや中堂さんとその会話を思い出していた。違う、あれは死体解剖についてのドラマだったから、今の私のシチュエーションとはちょっと違うんだ。でもいいドラマだったな。「法医学は未来のための仕事」今回の手術は…「そうだこれは私の手術であって死体の解剖じゃなかった。」なんて考えていたら医者が来た。

今回の手術についての説明を受けた後に、紙にサインをさせられた。それから、”have a great sleep”と言われて、呼吸器?のようなものをつけられてからは記憶がなくなった。

起きたら手術はもう終わっていて、私は「回復室」にいた。

Published by Mufasa.

日本と台湾のハーフ。日本語、中国語、英語でブログをゆるーく書いてます。

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